木曜ドラマTRICKのちょっといい話。

episode5

episode1 episode2 episode3 episode4(前篇)(解決篇) episode5(前編)(解決篇)

【第10話】

最終話
解かれた封印
超能力の真実

ON AIR
2003/12/18

(視聴率)
関 東 13.6%
名古屋 11.2%
関 西 16.6%

【脚本】

蒔田 光治

【音楽】

辻 陽

【主題歌】

「私とワルツを」

鬼束ちひろ
作詞・作曲/鬼束ちひろ
編曲/羽毛田丈史
(東芝EMI)

【キャスト】

仲間由紀恵

阿部 寛

生瀬 勝久

大谷 直子

成宮 寛貴

六平 直政

でんでん

姜 暢雄

つぶやきシロー

デビット伊東

岡田 眞澄

森本 レオ

椎名 桔平

ガッツ石松

若林巡査
村木 仁

大城智警部補
樋渡 真司

前原 実

俵 広樹

屋良 学

久保田篤

ベンジャミン
アイッソウ

グシュ・オルガ

漁師 兄
奥平 聡

漁師 妹
奥平 綾子

与那覇 光秀

渡久山 吉彦

喜屋武 久紀

奥 且彦

砂川潤一郎

後藤 盛崇

佐久田 勝介

高西 完

西村 和己

池間 敏昭

玉城 光弘

高橋 幸夫

野原 千春

当真 央

伊藤 守

北畠 邁

貴島 圭介

国広 哲司

横田 偉男

与那覇 隆一

松本 明

下地 誠

友利 進

高吉 良次

橋詰 久幸

砂川 博音

下地一二三

石嶺 篤浩

仲里 淳

放映プロジェクト
芸優

野際 陽子

【撮影】

斑目 重友

坂本 将俊

山田 洋和

池田 英孝

【照明】

川里 一幸

【VE】

中村 寿昌

福重 伸隆

小倉 由香子

【音声】

中村 徳幸

清水 良樹

戸田 直之

【美術】

稲垣 尚夫

【装飾】

山田 好男

飯沼 明広

【操演】

鳴海 聡

船橋 誠

【小道具】

杉本 和代

【スタイリスト】

富樫 理英

【衣装】

田中まゆみ

【着物コーディネート】

河野 仁子

【ヘアーメイク】

宮内三千代

小林 真由
(仲間由紀恵担当)

西村佳苗子
(野際陽子担当)

糸田 雅美

【撮影助手】

杉村 正視

古城 正智

金子 徳子

【照明助手】

平賀 陽子

杉岡 厚治

五十嵐 敏也

【音声助手】

臼井 久雄

出口 晃

下元 徹

田村 智昭

【美術助手】

小出 憲

中村 香子

小野ゆう子

川村 豊

【装飾助手】

飯沼 明広

【小道具助手】

牧野 誠

【編成】

上田めぐみ
(テレビ朝日)

樽井 勝弘
(テレビ朝日)

【HP制作】

前田 秀彦

松崎 みどり

【スチール】

高島 一夫
(文化工房)

【タイトルバック】

(ディレクター)

熊坂 出

【ダンサー】

松田菜々子

(撮影)

西岡 章

(VE)

森 弘昭

(照明)

後藤 謙一

【イラスト】

千原 櫻子

【イラスト構成】

東條 政利

【DC制作】

西 勇哉
(テレビ朝日)

鈴木さやか
(テレビ朝日)

【編集】

大野 昌寛

【オフライン編集】

山口 牧子

【M A】

戸田 直之

村山 巧

戸田 直之

【CGプロデュース】

西村 敬喜

【CGディレクター】

小関 一智

(オフライン編集)

山口 牧子

(編集助手)

天賀 卓也

(MA助手)

永井 純

安達 亨介

【音楽プロデュース】

志田 博英

【選曲】

渡邊 朋子

【音楽コーディネート】

河原崎 秀樹

【効果】

中村 友美

【協力】

NICE・DAY

江戸川橋スタジオ

TAMCO

グリップアソシエイト

CPルーム

ベレッツァスタジオ

阿ウン

トライアムズ

光映新社

ステップ

【音楽協力】

テレビ朝日ミュージック

【技術協力】

池田屋

【美術協力】

BOOTH

えんぎ屋

(株)水晶院

Karrimor

NOMAD

メガネドラッグ

【衣装協力】

UNIQLO

HANJIRO

GoldenBear

Eddie Baure

L'EST ROSE

IMAGE

OTTO

ark-pro.net

SUNCLOVER

【車両】

日本照明

【カースタント】

スーパードライバーズ

【ファイティング
コーディネート】

FCプラン

【ロケ協力】

PRO SHOP GARA

ホテル共和

ホテルアトール
エメラルド宮古島

エフエムみやこ

東急ナビジョン

羊肉料理
ひつじの里

【演出補】

木村ひさし

【助監督】

丸毛 典子

中西 正茂

東條政利

神徳 幸治

井上雄介

利光佐和子

土岐 洋介

三村 薫

【記録】

奥平 綾子

田中 小鈴

金丸 律子

【マジックアドバイザー】

藤原 良雄

【書道指導】

高階まるみ

石井 英一

【宮古島クルー】

トラ坊

モリゾウ

カッチャン

ジュン坊

カオル

ヒコ坊

キャン

【制作管理】

三井 孝俊

大槻 厚史

【制作進行】

小柳智則

佐藤大樹

井上真一

政策応援

松永弘二

制作デスク

早川 朋江

車両【日本照明)

井上 美成

小柳 研二

田羽田 正光

【ラインプロデューサー】

渡邊 範雄

【ラインプロデューサー補】

大形 美幸

吉田 拳雄

【制作担当】

朝比奈 真一

【プロデューサー補】

上田 直彦
(テレビ朝日)

【宣伝】

小久保 聡
(テレビ朝日)

【製作主任】

坪井  力

高橋 輝光

【プロデューサー】

桑田 潔
(テレビ朝日)

蒔田 光治

山内 章弘
(東宝)

【演出】

堤 幸彦

【制作協力】

オフィスクレッシェンド

【制作】

tv asahi

東宝株式会社

『私はいったい何者なのか?』

シリーズ1、最終エピソードと同様に”血の宿命”から黒門島に向かう奈緒子。
そもそも今回のシリーズは「シリーズ1の雰囲気に戻す」とテーマがあったためか
最終回の舞台もシリーズ1の最終回が撮影されたのと同じ場所が選ばれている。
”ただ単に宮古島に行きたかったから”なんていう理由では、もちろん無い!と思う・・・

『本当の最終かい?』

里見の習字ネタ。野際さんが喋っているのも同じ意味のフランス語だろう。
シリーズ1で成功して以降、続編ネタは最終回に必ず登場しているが
今回は前篇のオープニングから露骨に登場しており、いつもよりも多目。

『不吉な予感・・・』

奈緒子に危機が迫っている事を遠く離れた長野で察知してしまう里見。
シリーズ1では奈緒子と里見のシンクロニシティー現象が何度も登場し二人の持つ
能力を暗示していた事が、最終話への伏線となっていたが「2」以降の作品では
この手の表現は全く登場しておらず、原点回帰を感じさせる演出。

『長谷千賀子・・・これ山田の字だ・・・』

千賀子の”呪いの封筒”に入っていた紙に書かれていたのは千賀子の名前。
これが、あらかじめ千賀子が用意したものではなく、間違いなく奈緒子本人が
書いたものである事を証明するために用意された上田のセリフである。

い棒、中のすあま、つまようじ本、謹新年、と山田奈緒子の
前回、上田が登場したシーンで一瞬だけ画面に映った奈緒子の買い物メモと
荒川区商店街組合宛の年賀状に書かれた文字が、ここで意味を持ってくる。

『黒門島』

予告編には”真の霊能力者山田奈緒子・・・黒門島へ”と書いてあったが、今回の
舞台は菊雄が”琉球の無人島”と言っているように厳密に言えば黒門島ではない。
とは言え今回のシリーズも最終話の撮影は全篇、沖縄県の宮古島で行われている。
宮古島は沖縄本島から300kmほど離れた位置にある珊瑚礁が隆起して出来た島。
八つの群島から成る島で、宮古本島の面積は158.88平方キロメートル。

宮古島は「TRICK」シリーズ1の最終回が撮影された場所というだけでなく
堤監督の『さよならニッポン!』『ケイゾク・映画』が撮影された場所でもあり
さらに仲間由紀恵さんのご両親や記録の奥平紋子さんの故郷でもある。
なにより、堤幸彦監督が”第二の故郷”と言って憚らない場所である。

『明治に入って近代化の波が容赦なく押し寄せた時、それを拒否した
 者達は黒門島を追われた・・・・我々はその黒津分家の生き残りさ』

何度やっつけられても、性懲りもなく登場して来る”黒津分家”の一味。
「明治時代に黒門島を追われた」というのはシリーズ2最終話に登場した
”妖術使い(椎名桔平)”や小松純子(石野真子)の祖先と同じ時期にあたる。

100年以上前に島を追われた分家の末裔のワリに全員が”沖縄なまり”だったり
菊雄が黒津分家の当主だったり(それじゃ、次男と三男はなんだったのか?)とか
里見が黒門島から脱出した時の話にミョーに詳しかったりするのはなぜか?

その謎は”コイツらの言っていることが全部デタラメだから”と考えれば解決する。
そもそも世襲制において家督を継げるのは長男だけで次男以下は全部分家になる。
とすれば黒門島に次男、三男以外に分家の人間が残っていても何の不思議もないし
菊雄一味が黒門島から来たのだとすれば何を知っていても別に不思議な事ではない。

実際、オンエア版では触れられていないがノベライズ本には、黒津菊雄は
子供の頃に里見にふられた事をいまだに根に持っている。という記述があり
”明治時代にスマを追われた分家の末裔”では絶対にありえないエピソード。

『黒津菊雄 (くろつ きくお)』

黒津分家当主:黒津菊雄を演じているのは”でんでん”さん。
「TRICK2」のエピソード5でも”椎名桔平岩”のくだりで名前だけ登場したが
堤監督の作品は「ハンドク!」(TBS)や映画『溺れる魚』にも出演している。

黒津分家の当主とは言っているが、せいぜい黒津次男、黒津三男が3年前の事件で
失脚したので、菊雄がちゃっかり後釜に居座った。といった程度のものだろう。
”仲間由紀恵は小室ファミリー”とか”仲間由紀恵はTPD”と言うのと大差ないと思う。

『黒津康男 (くろつ やすお)』

菊雄の従兄弟(いとこ)、康男を演じているのはつぶやきシローさん。
テレビドラマに出演するのは2002年4月に放送された『浅草キッド』以来で
「つぶやき」という芸風も手伝って、わびしい佇まいが妙にハマる人である。

『二人目の従兄弟、黒津トメオ、はとこ 黒津シメオ、はとこ2 黒津はなお
 はとこ3 黒津とらお、又従兄弟 黒津しげお、又従兄弟2 黒津まつお
 その又従兄弟 黒津カツオ、従兄弟違い 黒津ふく、叔父 黒津かまと
 叔父2 黒津ベガンタ、叔父3 黒津恵道(ケイドウ)、姉婿 黒津ユヌス
 姉婿2 黒津フェデリコ、甥 黒津ホイス、甥2 黒津イリーチ、甥3 黒津ジョン
 甥4 黒津ポール、甥5 黒津ハリスン、娘婿 黒津リンゴ、同級生 奥平聡!』

これでもか!!というほどの人数が登場した謎の黒装束集団・黒津分家のメンバー。
色んな名前が登場しているが、ケイドウはおそらく「TRICK」最終話に現地スタッフとして
参加していた奥平恵道さんの名前で「イリーチ」は沖縄料理の料理法で炒め煮の事。
ジョン・ポール・ハリスン・リンゴは「THEビートルズ」のメンバーの名前だろう。後は不明。

さすがに同級生まで登場すれば今後、続編で『黒津分家』が登場してくる事は
もう無いだろう・・・・・もう無いと思いたい・・・・・いいかげん飽き飽き。

『これは黒門島に伝わる聖なる布だ』

100年以上前に黒門島を追われた黒津分家の末裔が、なんで黒門島に伝わる
”聖なる布”なんていう大事そうな物を持っているのか不思議でならない。
これも”こいつらがインチキだから”というのが一番シックリ来る答えであろう。

奈緒子 『・・・・・なんで!?』

黒津分家の連中が用意したミエミエの手品にアッサリ騙されている奈緒子。
シリーズ1、シリーズ2でも、同じように単純なトリックに引っかかっていたが
冷静な判断力を失うと奈緒子のような人間でもアッサリ騙されてしまうので
普通の人はこういう”怪しげな集団”には近寄らない方が無難。

黒津分家 『お前は本物だ・・・もう元の世界には戻れないんだよ』

この分家一味のセリフから、洞窟で行われた青い玉と赤い玉を分ける手品は
奈緒子に自分の霊能力を信じ込ませるために用意したものだった事が分かる。

『神の憎悪の象の像』

『神の象の像』はニセモノで本当は『神の憎悪の象の像』だという黒津一味。
どっちでも大して差は無いような気がするし、ホントに大した違いは無い。
鼻の形が放送コードギリギリな気がする、美術担当:
稲垣尚夫さんの力作。

菊雄 『神の憎悪の象の像は、ある大切な物を封印してるんだよ』

康男 『それは私達の祖先の霊能力者が生み出した強力な武器らしいのです』

菊雄 『この島は、お前のお父さんとお母さんが黒門島から逃げ出した時
     流れ着いた島だよ・・・その時、お前のお母さんは黒門島から
     持ち逃げした武器を、ここに封印したんだよ』

康男 『ただ・・・封印を解くのには、この像の前で
     五文字の言葉を唱えなければならないのです』

100年以上前に黒門島を追われた分家の子孫のワリに20年ほど前に
黒門島で起こった里見脱走事件の顛末に妙に詳しい黒津分家の一味。

黒門島を脱出した後で流れ着いた無人島で里見がした事まで解説しているが
この島に封印したと言われる武器の事を、里見が誰かに伝えた様子もない。
コイツらが里見の事を知っていたのだとしても、どうやって調べたのだろう?

『出来なければお前を生かしておく必要など無いのだからね』

要するに分家一味が知りたかったのは像の封印を解く5文字の言葉。
里見に探りを入れても埒が明かないので奈緒子を標的に変えたのだろうが
拉致するぐらいなら奈緒子に霊能力を信じ込ませる必要も無かった気がする。

『私は黒門島、黒津分家の命令で貴女を見張るように言われています』

黒津分家の命令で里見を見張っていた。と言うワリに、里見の前に姿を
現してしまっているどころか名前まで名乗ってしまっている南方熊作。
奈緒子が封印の言葉を知らないようなので、今度は奈緒子を人質にして
里見に脅しをかける作戦に方針を変更した黒津分家の一味。

最初からそうしていれば奈緒子に霊能力を信じ込ませる必要も無く
北見や千賀子が死ぬ必要も無かったのではないかと思うのだが・・・・・

『あの子は本物の霊能力者です・・・その力が目覚めたら
 あなたたちの手に負える相手ではありません・・・』

これはシリーズ1の頃から里見が言っている事だが本気なのか脅しなのかは不明。
しかし、奈緒子の霊能力が本物なのかどうか知っているのも里見だけだろう。

『居酒屋 来さ村、、○○バレー●●ゾーン、つぼ八つぼセンター
 人面タクシーのりば、スリット高校、もど霊園、闇十郎ミュージックスクール
 大人の社交場 時間の穴場、歌舞音玉中学御獅舞分校、ホテル六つ墓』

上田が御獅舞村の駐在所で広げていた地図に書いてあったモノ。
今回のシリーズだけでなく「TRICK2」に登場した印象的な名前が並んでいる。
放送がクリスマスシーズンだった事もあって駐在所もクリスマス仕様。

『矢部と菊地の入浴シーン』

ヅラに水気は天敵という事でシリーズ1から矢部が風呂やプールに入るシーンは
何度か登場しているが、石原と矢部が一緒に風呂に入っているシーンは「1」では
1度も無く、「2」で1回、「劇場版」で1回しかないが今回のシリーズだけで4回もある。
今回のシリーズが初登場となった菊地の登場シーンをなるべく増やしたいとか
”何度もやる事が笑い”だとは言っても、もうちょっと見せ方に工夫がほしい。

『影法師!!』

菊地に見えないようにコッソリとヅラを持って風呂の外に持ち出す矢部。
ヅラの”陰干し”と”影法師”のダジャレだろう。

『マジソンバッグ』

1970年代に全国の中・高生の間で大流行したボストンバッグの事。
米国スポーツの殿堂『マジソンスクゥエアガーデン』の名前が書かれたこのバッグは
発売当時はアメリカンテイストが受けて、舶来モノの高級バッグとして珍重されたが
実は製造していたのは(株)ACEという会社で完全なメイド・イン・ジャパンだった。
正規品だけで300万個、偽物も含めると全国で2500万個が売れたそうな。

『浪速愛マイバンク』

マジソンバッグに入っていた2000万円の札束の帯に書いてあった文字。
平仮名に直すと『浪速あいまいバンク』。あまりお金を預けたくない銀行である。
茨城県が舞台のドラマでなぜか関西系の銀行名なのは『白い巨塔』ネタか?

菊地 『11月29日・・・ひょっとして金井さんの金庫から盗まれた2000万って
     これじゃないですか?事件が起きたのはこの二日後です!!』

矢部 『よし!!分かった!!・・・犯人は・・・このカバンの持ち主や!!』

めずらしく賢いところを見せる菊地と当たり前の事を言う矢部。
最終回になって今さらだが、このコンビだとこういう形がいちばん自然に見える。
ボケ倒す矢部に振り回される新人の菊地。でも良かったんじゃないかしら?

『黒津一味のアジト』

奈緒子が閉じ込められた小屋の周りに広がっていたのはのどかな南国の情景。
宮古島では最終回の撮影前、新聞にエキストラ募集の記事が載ったらしいので
ここで踊ったり遊んだりしている人たちは完全に現地のエキストラだろう。
屋根の上や島の各地ではためいている赤い旗は「さよならニッポン!」の旗。

『よかった!!貧乳で!!』

引っかかるところが無いので思いのほか狭い穴を通れてしまった奈緒子。
普通なら絶対こんなセリフ通らないんじゃないかなぁ?と、素直に思う。

『兄、妹』

上田を黒門島に運ぶ、Tシャツに兄、妹と書いてある分かりやすい二人。
妹の方は堤組で”記録”を担当する奥平紋子(おくだいらあやこ)さん。兄の方は
黒津一味の中にも名前が登場する奥平聡(おくだいらさとし)さんで実の兄妹。
宮古島出身で、兄・聡さんは「TRICK」最終回にも現地コーディネーターとして参加。
妹・紋子さんは「TRICK」当時と較べて、ずいぶん成長されているように見える。

「GARA」

上田と奥平兄・妹の三人が乗っている船に書いてある文字。
撮影協力にも名前がある『PRO SHOP GARA』の所有する船と思われるが
この『GARA』は奥平聡さんが現地で経営している釣りとダイビングのお店の事。

兄 『あの島にはねウトゥルスピンナギムヌ(物騒な不審なやつら)が
   いっぱいいるよ!!やめたほうがいいよぉ〜!!』

妹 『アガイ、ニイニイ!!(ヤバイ!兄ちゃん)もうヤーニ(家に)帰ろうよ!』

兄 『ヤーンカイ、ヤーンカイ(帰ろう帰ろう)』

妹 『ジェーッタイシヌヨ(絶対死んじゃう)ダンズンニャ、バンタースンガマタヨ
   (行ったら私達死んじゃうよ)!!ンニャンニャダイズ(超ヤバイ)』

奥平兄・妹の宮古訛りまる出しなやりとりが、非常に効果を上げており
いわゆる”ウチトラ”(身内のエキストラ)を越えた素晴らしい味を出している。
堤監督は、ロケ地でたまたま見つけた人をスカウトしてエキストラにしてしまう事が
よくあるそうだが、たしかにこういう味は地元民でないと出せないものだろう。

奈緒子 『上田さん!!・・・・てっきり・・・マウンテンゴリラかと』

上 田 『・・・・なんでだ!?いい加減にしろ!!』

シリーズ1の時と同じく、また奈緒子を救出するために黒門島にやってきた上田。
洞窟の中を背中を丸めて歩く様は確かにそれっぽいがマウンテンゴリラとは(笑)

上 田 『君のお母さんにな、黒門島の事を聞いてきたんだよ。
      黒門島の奴らにムリヤリ連れて来られたんだろ?
      ・・いいからここを出よう!!』

奈緒子 『もしかしたら・・千賀子さんが死んだの私のせいかもしれないんです』

何だかんだで、いつの間にかまんまと分家一味のペースにハマっている奈緒子。
ここで重要なのは上田が里見から、この無人島の場所を聞いてきている事。
上田は里見に電話で黒門島の事を聞いたはずなのだが、結果的にこの島の場所を
聞いてきたという事は、上田から御獅舞村で起こった事件の経緯を聞いた里見が
南方の話と統合して、事件の背後に黒津分家の一味が絡んでいる事に気づいて
奈緒子が連れ去られた場所を推理した。という事になる。

上 田 『そんなものはな・・・・・単純なトリックだよ!!・・・・
      まさか本気で超能力があるなんて思ってたのか?』

奈緒子 『だったら北見さんはなぜ死んだですか!?』

上 田 『・・・・自分で死んだんだよ』

あらかじめ黒門島の医者に頼んで心臓の近くの筋肉に針を埋め込ませておいて
上田と奈緒子の目の前で自力でそれを心臓に送り込んで死んだ。という話だが
”検死をした浅田医師は、傷口のようなものがどこにも無いと言っていたが?”とか
”そんなに上手い事いくわけねぇだろ!!”なんて事はこのさい言わないとしても
そんな事をして北見になんの得があるのだろうか?

黒津分家が”来世での魂の救済をお題目にするカルト教団”だと言うなら分かるが
分家の連中はせいぜい”島に伝わる財宝を狙う泥棒一味”程度の連中なので
北見がそんな殉教者みたいな死に方をする理由がまったく理解できない。
北見の検死をした浅田医師が分家一味とグルだったと考えるのがいちばん自然。

『北見さんの死の謎が解けない限り、他の者が
 呪いでないとは誰にも言い切れないんだ!』

たしかに、北見は死んでも何の得にもならないのだから自殺のはずが無い。と
考えたら謎は解けっこないのだが、こういうのを机上の空論と言うんじゃなかろうか?
まぁ上田の言っている事なので、これが正解であるという保証はどこにも無いが。

『アタシとおんなじ・・・・黒門島の出身だからですか?
 何をするか分からない・・・・バカな人間たちだからですか?
 やっぱり・・・・千賀子さんの言ってた通りだ。
 ただ・・上田さんたちは自分達が説明できない事を認めたくないだけ』

北見の死に関する上田の珍説に『そんなお人よしがどこにいるんです』と常識的な
反論をしておきながら『あいつらならやりかねない』という言葉に逆ギレする奈緒子。

誘拐されたうえに分家にコロッと騙されて、その気になってるのは最悪の展開だが
このセリフからハッキリ分かるのは奈緒子が霊能力の存在を否定し続けているのは
”霊能力を信じていないから”ではなく”信じたくないから”だという事。

奈緒子が儲かりもしないマジシャンを続けるのも自称・霊能力者を目の敵にするのも
全ては亡き父:山田剛三の遺志を継いでの事であって、どちらも奈緒子にとっては
幼い頃に亡くした”大好きだった父”と自分を繋ぐ唯一の絆という事なのだろう。

それゆえ奈緒子は”それ”を否定するような現象に対してことごとく反発するし
父が否定していた霊能力を、自分が認めざるを得ないような状況に陥ると
父との絆が途切れてしまうような不安を覚えて、たちまち冷静さを失ってしまう。

それでいて、母:里見から繋がる血の宿命に否応無く巻き込まれる奈緒子は
母を愛しながらも、母から受け継いだ血を呪ってもいるのではないだろうか?
このセリフは、そんな奈緒子の心の葛藤が爆発したものと言えるかもしれない。

二人の表情を写していないのが、お互いの心が見えない感じで意外と効果的だが
奈緒子の心が最も激しく揺れ動く、物語的にもキーポイントとなる重要なシーンで
役者さんの表情を一切写さない事を選択するのは勇気のいる決断だったと思われる。

『君たちには物事をシステマティックに解決するという発想が無いのか?』

神の憎悪の象の像の封印を解く5文字の言葉を解き明かそうとする奈緒子に
上田が授けた知恵は「考えられる組み合わせを全て試してみる」という力技。
確かにコンピューター的発想でシステマティックだが合理的かというと大いに疑問。

上 田 『分かったよ・・・・私もノーベル賞候補の物理学者だ。もし君が
     自分の事を本当に霊能力者だなんて思ってるんだとしたら、それで
     あいつらのいいなりになるつもりなら、今から俺と君は敵同士だ!』

奈緒子 『・・・・・・』

上 田 『二度と君を・・・助けになんか来ないからな』

期せずして芝川玄奘の予言が的中する事になってしまった上田と奈緒子。
「TRICK」9話では奈緒子から告げた決別の言葉を今回は上田に言わせている。
何だかんだ言って、これまで何度も奈緒子の危機を救ってきた上田の言葉だけに
『二度と助けに来ない』というセリフは奈緒子にとって重く響く言葉だろうと思う。

『大城聡警部補 (おおしろ さとし けいぶほ)』

見事な宮古訛りを操る大城聡警部補を演じているのは樋渡真司さん。
あんまり上手なので沖縄出身かと思ったら、まったく関係ないそうです。
ちなみにノベライズ本では五十嵐文三警部補という名前になっているが
これは「ハンサムマン」の五十嵐文郎プロデュサーの名前から来ていると思われる。

大 城 『実は、この島をピンナギムヌ(不審な奴ら)が占拠している
     という通報がカナガイ(以前)から寄せられていたんです。』

上 田 『神奈川?』

大 城 『はい、ミーミル!!(見てください!)』

このセリフからも黒津分家の一味が”周辺の住民ではない”事が推察されるが
黒門島でもなく周辺の島でもないとすると分家一味は一体どこから来たのか?

岸 本 『本物の霊能力者って山田奈緒子のことなんじゃないですか?』

上 田 「ばかな!!こんなのはただの脅しですよ!」

大 城 『アランアラン(ちがうちがう)
     バンターユビ(我々は夕べ)密かにクマ(ここ)に上陸しました。
     奴らがクマ(ここ)を知ってるはずニャ〜ン(ない)』

上 田 「・・・・月の輪グマ?ヒグマ?」

大 城 『かばいだてするとしぇんしぇ〜も同罪ですよ』

浜辺の流木に書いてあった脅しのメッセージに勝手な解釈をする岸本。
御獅舞村にいた時とくらべて妙に積極的に事件に首を突っ込み出している。

『あほうえぞ・・・あほうえだ・・』

結局、上田の提案したシステマティックな方法を試している奈緒子。
奈緒子が上田の事をバカにしているような気がするのは編集のトリック(笑)

『門構えに火』

南方に聞かれて里見が封印の言葉を記した紙に書かれていた文字。
9話の冒頭で里見が奈緒子に話そうとしていた”プロポーズの言葉”が
なぜ”大事な話”だったのか、ここに来てようやく意味が分かる。

菊雄 『だったらお前は超能力を認めた事になる・・・俺たちの仲間だ』

康男 『・・・・背理法ですね』

背理法とは、数値XがAもしくはBである場合、Xを表す数式にBを代入して
X=Bでない事を証明することで、X=Aである事を証明する方法の事。
ここでは、奈緒子が呪いの封筒に上田の名前を書けないのだとすれば
それは逆説的に奈緒子が霊能力の存在を認めた事になる。と言う意味。

『南の国なのに北風が冷たいなぁ〜・・・北風ぇ〜ずるいぞ〜
 北の国・・・から風ぇ〜・・・・きたないぞぉ〜』

2003年10〜12月期の民放連続ドラマではドラマの老舗フジテレビ系・月9ドラマ
『ビギナー』と深夜からゴールデンタイムに昇格したANB系・木9ドラマ『トリック』が
同期放映作(白い巨塔を除く)の視聴率で首位を争うという異常事態になっていた。

最終話・前篇の9話で初回に次ぐ高視聴率17.3%(関東)を記録した『トリック』は
最終回の視聴率が16.9%に終わった『ビギナー』を逆転して、ついに同期首位に立ち
そのまま『木曜ドラマ トリック』が同期首位でゴールする事はほぼ確実かと思われた。

ところが、まるでこの事態をあらかじめ予見していたかのように他局より連ドラを一週早く
終了させたフジテレビが、最終週、他局の連ドラの最終回に大人気ドラマ「北の国から」の
総集編の再放送を五夜連続放送でぶつけて来たために、『トリック』最終回の視聴率は
今回のシリーズで最低の13.6%(関東)に急降下。結局、平均視聴率わずか0.17%差で
テレビ朝日は”連ドラの視聴率でCX月9に勝つ!”という大金星を逃す事になった。
この上田のセリフは、そんな結末を予見していたかのようなつぶやきである。

菊地 『私たちはエドモンド大学離島研究会の者です!』

矢部 『ウソくさっ!』

「TRICK」一話で『エドモンド大学鉱物研究会』と言っていた人とは思えない発言。

『それ省吾さんのです!!「笑っていいとも」の時から使ってました』

矢部の質問に答えた岸本のセリフ。省吾役の久保田篤さんの経歴ネタ。
金井家の現金盗難事件は状況から見て岸本が最も怪しいのは間違いないのだが
矢部がアッサリ岸本の発言を信じているのは北見の証言が効いているのだろう。

『東京警視庁に応援を依頼したんです』

無人島を不法に占拠している黒装束集団・黒津分家の一味が茨城で発生した
殺人事件に絡んでいるとすれば、沖縄県警の管轄を超えた広域捜査でもあり
かつ、危険な犯罪集団という事にもなるので、地元の県警本部から警察庁へ→
警察庁から警視庁公安部へ、と応援要請があっても不自然ではないかもしれない。

大城警部補 『奴らは山田花子という霊能力者を中心とした危険な集団です』

バカ刑事たち 『山田奈緒子・・・な・お・こ!』

どうやら地元の県警からはすでに危険な犯罪集団としてマークされている分家一味。
山田花子とは、ドラマ化や映画化もされた『ジョージア』のCMで、受付嬢として
何度も仲間由紀恵さんと共演している吉本興業所属の女性タレントの事である。
いつも間違える側のバカ刑事コンビがめずらしくツッコミ役に回っているのが面白い。

矢部 『よ〜し!!20年後にここに別荘建てるぞぉ〜!!』

菊地 『明日パパに言って・・この島買ってもらおうっと!!』

矢部のミョーに切実でせつなくなる夢と、菊地のお坊ちゃまぶりを対比したセリフ。
今回は、これまでで一番うまく菊地のキャラクターが生かされている気がする。
菊地に関してはキャラクターを立たせようとして色んな要素を詰め込んだのが
結果的に菊地のイメージを分裂症的で散漫なものにしてしまったきらいがある。

『何で一人でやらせるんだよ・・・・この・・バカ上田!!』

やっぱり、上田が手伝いに来てくれる事を期待していた奈緒子。
超能力なんて無い。と言いながら実は信じていたり、上田さんには関係ない
と言いながら上田に期待していたり、あんがい複雑な女心の奈緒子であった。

『クェンティン・タランティーノじゃないよ・・・すこ〜し意識してるけどね』

クェンティン・タランティーノは米国の映画監督。
1992年『レザボア・ドッグス』で監督デビュー1994年「パルプフィクション」の大ヒットで
世界的な名声を得た人だが、その正体はマカロニウェスタン、カンフー映画、アニメ
チャンバラ、ヤクザ、ホラー、怪獣映画などのB級映画をこよなく愛する映画オタク。
確かに見た目は、すこ〜し”つぶやきシロー”さんに似ていない事も無い。

康 男 『あのしぇんしぇいなら来ません、あなたの呪いで死んだはずですからね』

奈緒子 『・・・・ウソだ!!』

シリーズ1、最終回、舟を捜しに行った上田の事を待っていた奈緒子が
黒津元男(柴崎蛾王)と黒門島の洞窟の中で交わした会話と良く似たセリフ。

『これ・・・50音順に試そうとしてもムダですよ』

強力な武器を封印した5文字の言葉を調べている奈緒子に康男が言ったセリフ。
黒津分家の一味は4人がかりで20年も試していたらしいが、奈緒子の年齢から
逆算すると、里見がこの島を訪れてから、だいたい6〜7年後からという事になる。

矢 部 『あいつらはなぁ・・・危険な霊能力集団じゃ!』

奈緒子 『だから・・・私を・・・捕まえようとしてるのか・・』

矢部が自分の事を捕まえに来たと聞いて沈んでいる奈緒子。
念力だろうと犯罪だろうと分家の一味が北見や千賀子を殺した事に変わり無いので
分家の連中と一緒にいたら、奈緒子が警察からマークされるのは当然だと思うが。

『恐ろしい霊能力・・・お前どうやって俺の頭皮を』

あくまでヅラを頭皮と言い張る矢部。呆れるほど往生際が悪い。

『お前もっと人を信用せいよ〜、一緒に事件を解決してきた仲間やないかぁ〜』

ミョーに人情劇っぽい矢部のセリフ。横山たかしさんのネタのパクリ説あり。

『私のせいで・・・上田さんが』

自分の呪いのせいで上田が死んでしまったと思い込み、島をさまよう奈緒子。
「TRICK」9話で実家の蔵の中にあったヒミツを見てしまった後のような切ない芝居。

「ひんにゅう」

と、思ったら生きていた上田。しかし帰還の挨拶が”貧乳”とは(笑)
奈緒子が残して行ったメモを見た上田の仕返しといったところか?

奈緒子 『これ書いたのお前か?・・・手伝いたいなら手伝いたいって
      素直に土下座して言えよ!!今までどこ行ってた!?』

上 田 『会いたくないって言ったのは君の方じゃないか!
      それにこっちは向こうの崖から落ちて死にかけたんだ!!
      危ういところで命は助かったがな・・それで俺は必死に
      崖を崖を這い登ったんだ!!』

奈緒子 『それじゃやっぱり、あの・・・呪いのせいで・・・』

上 田 『呪い?・・・・キサマ、まさか俺を呪ったのか!?
      ・・・・土下座しろそこに!!』

感動の再会のはずが、どうしても素直になれずケンカ腰になってしまう凸凹コンビ。
上田の『崖を崖を』はエピソード4でもやった『ヒモでヒモで』に続く繰り返しネタ。
呪いの話を聞いて本気で怒リ出した上田の「土下座しろ!」が面白いシーン。

『ザ・スケルトン謎解き』

前回に続いてとても親切な謎解き。小道具を作る手間もさほど掛かりそうもないし
セリフだけで説明すると分かり難いうえに長くなりそうなので、そこら辺が理由だろう。

『あいつら・・・騙しやがって!!』

また上田のおかげで黒津分家の一味のまやかしから目を覚ました奈緒子。
まるで「ごくせん」の山口久美子のようなドスの効いた声で、3年前のシリーズ1に
まったく同じセリフがあったとしても、たぶん同じ言い方はできなかっただろう。
今見返すと、本気で弱々しくてたどたどしいセリフがあるシリーズ1の演技から
本当に演技の幅が広がっているなぁ。と感じさせてくれる仲間由紀恵さん。

『きっと母は黒門島の財宝を持ち逃げしたんですよ!!・・・・強欲だから』

なぜ自分がこんなところに連れて来られたのか、ようやく気づいた奈緒子。
しかし強欲ぶりについては人の事をどうこう言える筋合いではない。

『ギャルは・・損で・・・マドモワゼル・・・クロワッサン・・・プロポーズの言葉・・』

南方から見せられた里見が書いた封印の言葉を思い出した奈緒子。
奈緒子が最後まで里見の話を聞いていればここで答えが分かったはず。

『日本語に無い発音だから、いくらやっても駄目だったんだ!!』

プロポーズの言葉がフランス語だと知って、いい事に気づいた上田次郎。
しかし、黒門島からも離れた、この無人島に一体、誰が、いつ、どうやって
こんな仕掛け(音声認識装置)をこしらえていたのか気になって仕方が無い。

現在ではテレビゲームなどにも気軽に使われるようになった音声認識機能だが
25〜26年前、ファミコンも無い時代に奇術師とシャーマンが作るのは不可能だろう。
黒門島から逃げ出した時に、こんな大掛かりな仕掛けを作る道具を持っていた。
と、考えるのもあまりにも不自然なので、元々ここにあったとしか考えられない。

また、黒津分家の一味が封印の言葉が”5文字の言葉”だというのを知っていた事と
里見が封印の言葉を自分で決めている事から見て、この”象の像”の存在については
黒門島では古くから知られており、その仕組みについてはカミヌーリの一族だけが
口伝により伝承していた。と考えるのがいちばん無理が無いのではないかと思う。
そして、その仕組みについては”超科学”以外に説明のしようがない(笑)

どうせなら神の象の像と神の憎悪の象の像が二つセットで封印を解く鍵になっていて
その片方を里見が島から持ち出していた。とでもした方が仕組み的には無理が無いが
そうすると”上田と奈緒子が二人で謎を解く”という見せ場が作れなくなってしまうので
トリック自体の整合性よりも、物語的な盛り上がりを重視したという事だろう。

『ジロー!!上田〜!!ベストを尽くせぇ〜!!』

必死にフランス語の愛の言葉を考えている上田の頭の上に電球が光っている。
「もうやめる」と言いながら、けっきょく最終回にも登場した電球ネタであった。

『Je t'aime』(ジュ・テム)

最初に上田が思いついた日本ではポピュラーなフランス語の愛の言葉。
[Je]は”私”を意味し[t'=tu]は”君”を表す二人称、[aime]は”愛する”という動詞。
日本語に訳すと”僕は君を愛している”というカジュアルな感じの告白の言葉。

『Je vous aime』(ジュ・ヴ・ゼイム)

次に上田が思いついたこの言葉は、大まかな意味は↑とほぼ同じなのだが
相手をさす[vous]が敬語に当たる二人称なので日本語に訳すと”あなた”になる。
従ってこちらは”私はあなたを愛しています”というフォーマルな感じの告白になる。

『マジなのか?も5文字だろう!!』

結局、封印の文字の謎さえ解けば上田でも開けられてしまった封印の扉。
やっぱり、奈緒子が自分の事を霊能力者だと思い込んでいる必要はどこにもなく
結局のところ、奈緒子に霊能力を信じ込ませたかったのは、黒津分家一味ではなく
最終回で上田と奈緒子の対立構造を作り出したかったスタッフだったと言えよう。

奈緒子 『私は霊能力によりこれを作り出した・・・』

上 田 『・・・・・違うだろ!!』

ついに開いた”封印の扉”の奥に書いてあった注意書き。
しかし、それを読む奈緒子の手つきは亀山歌。しかも間違っている。

『私は霊能力によりこれを作り出した、一族が滅亡の危機に立った時
 この蓋を開けるが良い、お前達は生き延びる最強の力を手に入れるだろう
 ただし、この蓋を開けた最初の一人の人間は命を落とすだろう』

黒門島の遠い祖先の霊能力者がこの注意書きを書いたのだとすると
里見は島を抜け出す時に、この注意書きも一緒に持って来たのだろうか?
注意書きが書いてあるのは、どう見ても卒塔婆のようだが・・・

『こいつらの言うことは一切聞いちゃダメだ、母親を呪い殺したやつらだよ』

変なセリフに変な演技。『母親を呪い殺したやつら』ってお前の母親の事だろう。
『僕のお母さん』とか『私の母』とか、もっと他に言い方があるんじゃないだろうか。

上 田 『やめろ!まだわかんないのか!?それを開けさせる事が
      こいつらの目的だったんだ!!そのために君を霊能力者だと
      信じ込ませようとしていただけなんだよ!目を覚ませYOU!!』

奈緒子 『ごめんなさい、上田さんと私はやっぱり別の世界の人間でした
       いままで・・・・いろいろとありがとうございました』

予告編に書いてあったのは、このシーンの奈緒子のセリフであった。
そして”最後の扉”というのも、この封印の扉の事だったようだ。

しかし、上田の言っているとおり”最強の力”の蓋を奈緒子に開けさせる事が
分家一味の目的だったとすれば、扉を開けなければ読めない注意書きの内容を
分家一味が”あらかじめ知っていた事になる”ので、この注意書きも、里見が武器と
一緒に黒門島から持ってきたか、あらためて書き直したものでないと不自然。

そうだとしても、里見が”最強の力”を黒門島からこの無人島に運び込む前に
この封印の扉の奥に何が封印されていたのか?は不明。もしやお宝?

『アガイ!ダイズサイガ、ダイズサイガ(駄目だ!ヤバイ、ヤバイ)』

またまた宮古方言大サービス。今回のエピソードを見て、宮古言葉の
虜になってしまったあなたに
ステキなホームページをご紹介いたします。

『これは”しばなガス”です、長い年月をかけて珊瑚から出来た石灰岩
 それに含まれるマンガンがコロイド溶液となり移動して形成された
 高マンガン鉱を触媒として硫化しばな酸から発生します。比重は空気の
 1,6倍、強い毒性を持っています。という事でみんな逃げろー!!(笑)』

毎回、怪しい割舌が気になった菊地が一気にたたみかける名セリフ。
深刻なシーンで、なぜか笑ってしまう菊地のキャラクターも生きている。

ここで重要なのは”しばなガスの比重が空気の1.6倍”であるという事。
”最後の力”が封印されていた箱が周囲より高い台座の上に置かれている事と
”空気より重い”というガスの特性を利用して、この仕掛けが成立するのであって
状況が変われば、箱を開けた人間もろともガスを吸って死んでしまうからである。

となると”一族を守る強力な武器”を持ち出した後、この島に立ち寄った里見は
”この封印の扉の内側”がどうなっているのかを島を抜け出す以前から知っていて
ガスの機能が発揮される条件を再現するために、この封印の祭壇を利用した事になる。
というか、”しばなガス”は最初からここにあった。というのがいちばん自然なのだが。

『島を救う最強の武器っていうのはね、その人間の勇気と決意の事だったんだ』

『霊能力なんかじゃなかったんだ・・・』

結局のところ”最強の武器はあなたの心の中にあるのですよ〜”というオチで
シリーズ1の”貧しくとも清く生きよ、この言葉こそ真の宝なり”と同じパターン。

けっきょく今回も奈緒子の霊能力については何も解決しなかったこのドラマ。
いい加減にしろ!!!”という声も聞こえる中、シリーズ第1作「TRICK」の
エンディングについて、堤幸彦監督は↓こんな風に語られていました。

【トリック完全マニュアル:光進社より】

超能力に関しては(決着を)つけなかったし、つけたくなかったというのが本音です。
それにつけるとつまらないじゃないですか。消化不良という人もいるかもしれませんが
いいんじゃないですか。そこで山田奈緒子が超能力者だったということがわかっても
それって全然ハッピーエンドじゃないような気がするし、島の救世主としてそのまま
そうあって欲しくないし、気付かないまま日常生活に戻って欲しいと思うし。
白黒つけたくなかったというのが正直な気持ちです。

変にお涙頂戴っぽくなっちゃって『トリック』っぽくなくなっちゃう気がするんですよ。
9話で深く悩んで今までの彼女とは違う含みを持った奈緒子を演出した事で
たぶんお客さんは”10話でここまで引っ張って奈緒子は実は超能力者として
深い痛みを背負って・・・・そうなるに違いない”って思っていたと思うワケです。
それをスカーンと明るくスカしてね。あれは狙い中の狙いなんです。
そういう終わり方が好きじゃない人もいるだろうけど僕はそれでいいと思うし。

奈緒子 『上田さんは?・・・上田さんはなぜ生きてるんですか?
      上田さん逃げなかったんですか?・・・もしかして・・私のために?』

上 田 『フッ、バカなこと言うなよ・・・俺は・・このガスの仕組みを
      見破ってね・・・とっさに・・・しばなガス、しばなガス・・・ハッハッハ』

このシーンが今回のシリーズで最大のラブシーンと言って良いシーンだが
内容的には昭和30年代でも無いような超プラトニックなラブシーンである。
しかし、奈緒子と上田の身体が蹴ったり、殴ったり、掴んだりする以外の目的で
触れ合ったのもおそらく初めてで、珍しく茶化さずストレートに撮られている。

『そして黒津分家の者たちと組み・・あなたを疑っていた二人を殺した』

結局、全ての犯罪は黒津分家一味と岸本の手で仕組まれたものだった。
しかし、ここで気になるのは”岸本と分家一味がいつ手を組んだのか?”という事。
そして”岸本は一体何のために分家の連中と手を組んだのか?”という事だろう。

奈緒子の言う通り、岸本が”金を盗んで疑われたから分家と手を組んだ”のなら
千賀子が分家一味にそそのかされて復讐のために御獅舞村に入った後になるので
岸本と黒津分家が手を組む事になったのは”あくまで偶然”の結果という事になる。

しかし、それではあまりにも黒津分家の計画が場当たり的だし、すでに奈緒子を
おびき出すために千賀子を用意している事を考えれば、黒津分家の一味が
改めて岸本と手を組む必要は無く、この共犯関係は岸本にしかメリットがない。

黒津分家の一味が御獅舞村から姿を消している間に源三が殺害されているのも
岸本が実行犯だと考えればいちばん無理が無いが、そもそも源三は千賀子の
復讐のターゲットだったので、別に岸本の協力が無くても殺されていたハズである。

となると、分家一味が岸本を仲間に加えたのは千賀子の裏切りを阻止するためであり
それは計画の当初から決まっていた事だった。と考えた方が自然ではないだろうか?
どう考えても、この共犯関係は”まず岸本ありき”でないと無理がある気がするのである。

また、岸本の犯行の動機が金井一家の財産が目当てだとするのも無理がある。
なぜなら”岸本”は(おそらく父親の姓なのだろうが)、金井源三の血縁者ではないし
養子というワケでもないので、金井一家が全員死んだとしても遺産を相続出来ないし
実際、民代は殺されていないので、源三の遺産は民代が相続するだけである。

しかも、岸本の隠した2000万円は、偶然だったとしても矢部と菊地によって
発見されてしまっているので、これを取り返す事はほぼ不可能になっている。
しかし、それを聞いた岸本がうろたえたり、悔しがったりするような描写も無いし
また、岸本が黒津分家の一味が探していた財宝をあてにしていた素振りも無い。

そうして考えると、岸本誠が黒津分家の一味と手を組んだ目的は金銭ではなく
ただ金井源三と金井省吾に復讐を果たすためだったと考えるのが自然である。
そしてそれには、自分を捨てた母親に対する復讐も含まれていたかもしれない。

『ここで起きた不思議な念写も全部あなたがやった事だ!』

この上田のセリフを聞いて”念写って何の事?”と思った方も多いと思われるが
これは流木に書かれていた”今すぐここを立ち去れ、さもないと〜”という文章の事。
ノベライズ本では岩壁に、このメッセージが浮かび上がっている事になっているが
オンエア版では流木に思い切り書いてあるうえに、メッセージが登場したシーンで
”念写”という説明が一切無いので、ここで念写という言葉が出ても唐突に感じる。

『でかっ!!』

なんと警察手帳を出す南方熊作、矢部<菊地<南方の順番で大きくなっている。
2002年、67年ぶりにモデルチェンジされた警察手帳、ドラマに登場する警察手帳も
続々とこれに倣ったデザインに変更されているが、新らしい警察手帳のサイズは
縦:10.8cm、横:6.9cmで、偉くなるほど大きくなるという話は聞いた事が無い。

『私はずっと黒津分家に潜入捜査していた』

実は警視庁公安部の優秀な捜査官だったという事が分かる南方熊作。
これが警察庁・警備局の公安課なら分からないでもないが、矢部も菊地も同じ
警視庁公安部の刑事なのだから南方と全く面識が無いのは不自然な気がする。

警視庁公安部には公安総務課、外事課、公安機動捜査隊、公安一課〜四課があり
それぞれが、一課(学生運動・過激派捜査)、二課(労働争議・集団犯罪捜査)
三課(右翼関係の情報収集・捜査)、四課(資料収集・総計)と分かれているのだが
同じ事件で出動しているのだから”課が違う”という事も無いだろう。

それにしても、ずっと黒津分家に潜入捜査していたなら黒門島と何の関係も無い
芝川玄奘一味のところに”神の象の像”の話を聞きに行っていたのはなぜだろう?

「これで終わったわけじゃない、黒津分家は必ず蘇る」

本編には無いがノベライズ本に載っている黒津菊雄の捨てゼリフ。いい加減にしろ。

「ら・い・ね・ん・あ・え・る・・・・・か」

『こうなりゃ年一』、『続くわね』から、なぜかちょっとトーンダウンした習字ネタ。

奈緒子 『あれ!?上田さん・・・ひざ破けてますよ?』

上 田 『おぉう!?・・・なんだこれ?・・ちっきしょう・・そうか、あの時だ!!
      君がホントに蓋を開けたんで、あわてて逃げようとして!!』

上田のズボンの膝は、本当に逃げようとした時に破けたものなのか?
それとも岸本に崖から突き落とされそうになった時に破けたものなのか?
いずれにしても”奈緒子を置いて逃げようとしていた”という事実だけは変わらない。

上 田 『だが・・・最後にひとつ・・・君に言っておきたいことがある』

奈緒子 『私もあるんです、ちょっと恥ずかしくて言い出せないような事なんですけど』

上 田 『俺も口には出しづらい事なんだがな、じゃあ、お互い紙に書いて交換しよう』

お互いに封筒を交換して別れる。というラストシーンは「TRICK2」のラストシーンそのもの。
「2」では、里見の文字の力で奈緒子を追いかける事になった上田だが・・・

「なぜベストを尽くさないのか」

奈緒子が上田に渡した封筒の中に書かれていた文字。
明らかに上田の期待とかけ離れた、頼りにならない上田をからかった言葉である。
阿部寛さんの”この世の終わりのようなゲンナリ顔”は何度見ても可笑しい。

『バナナボートもあるよー、ヤシガニツアーもあるよー』

エピソード2の『バナナボートの間』ってのはこれがネタ元だったのだろうか?

「これ・・・プロポーズの・・・」

上田から渡された封筒に書かれていた文字は”絶対に言葉に出してはいけない文字”
そして、その読み方は、奈緒子の父:剛三が母:里見に告げたプロポーズの言葉
[Je vous aime (私はあなたを愛しています)]であった。

「浜辺にへたり込む奈緒子」

上田がどういうつもりで”この世に存在しない文字”を書いたのか確かめるためか
島中、上田を探して駆けずり回った挙句、浜辺で力尽きてへたり込む奈緒子。
浜辺にポツンと佇む小さな背中が奈緒子の弱さを表現しているようでもある。

「2」では里見の書いた手紙の力を借りて上田が奈緒子を追いかける事になったが
今回は上田自身が書いた手紙を見て、奈緒子が上田を追いかけているあたりは
上田と奈緒子の関係が、少しずつ進歩している事を感じさせる演出である。

『砂に埋まっていた上田』

鬼束ちひろの唄うテーマソング『私とワルツを』に乗って砂の中から現れたのは上田次郎。
最終回に鬼束ちひろが出演する事を期待していた人たちはさぞガッカリした事だろうが
もし、砂の中から出てきたのが鬼束ちひろだったら面白すぎてぶち壊しだったと思う。

このシーンの撮影では、撮影を見学に来ていた仲間由紀恵さんのお婆さんが
「どんどん砂に埋まっていくけど大丈夫なのか・・・・」と心配していたそうな(笑)

上 田 『・・・・・YOU』

奈緒子 『・・・上田!!』

上 田 『おぉ、そうだ!!さっきさ・・島の漁師さんが
      この島も、もうすぐ沈むって言ってたから早く帰るか?』

奈緒子 「うそつけ!!・・・なんだそれ?」

上 田 「Je vous aime・・・・Je vous aime・・・』

奈緒子 『うるさい!!軽々しく口にするな!!』

上 田 『ジュヴゼ〜ム!!』

奈緒子 『・・・!!』

上 田 『あぁ、そうだ、さっき漁師さんがな・・バナナボートなら5000円の
      オプショナルツアーで乗れるって言ってたが・・・一緒に乗るか?』

奈緒子 『乗らないよ!!・・・なんだそれ?』

上 田 『バナナボートだよ、ホラ、黄色くて長くて・・大きくて速いんだ・・・
      シュシュシュシューって行けるからな・・・ハッハッハッハ』

奈緒子 『なんじゃそりゃ?』

上 田 『バナナボート!!・・・・バナナボ〜〜〜ト!!』

奈緒子 「やめろ!!なんだよそれ!」

上 田 『ジュヴゼーム!!』

奈緒子 『うるさい!!』

上 田 『オーッ!!』

奈緒子 『やめろって!!』

上 田 『沈みかけてるぞ島が!!』

奈緒子 『え?』

上 田 『島が沈みかけてる!!』

奈緒子 「・・!!」

上 田 『バナナボ〜〜〜〜ト!!』

奈緒子 『やめろって!!』

「TRICK」や「トリック劇場版」のエンディングを思い出させる二人きりのラストシーン。
「TRICK」でも「トリック劇場版」でも、ラストシーンは完全にアドリブだったそうだが
『木曜ドラマ TRICK」のノベライズ本は上田が砂の中から現れる前で終わっているため
おそらく今回のラストシーンの上田と奈緒子の会話も台本には無いアドリブであろう。

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