2002/6/18      TRICK2
『TRICK2』 オンエア 2002/1/11〜3/22(ANB系)
連続・全11回 放映時間 23:15〜24:10

【プロデューサー】

桑田潔(テレビ朝日)

蒔田光治

阿部謙三

山内章弘(東宝)

【演出】

堤幸彦、鬼頭理三、木村ひさし

【脚本】

蒔田光治、太田愛、福田卓郎

【音楽】

辻 陽

【主題歌】

鬼束ちひろ『流星群』

作詞・作曲/鬼束ちひろ 編曲 羽毛田丈史

(TOSHIBA−EMI/VIRGINTOKYO)

【出演】

山田 奈緒子 ・・・・・・・・・・・・・・ 仲間 由紀恵

上田 次郎 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 阿部 寛

山田 里見 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 野際 陽子

矢部 謙三 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 生瀬 勝久

石原 達也 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 前原 一輝

池田 ハル ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 大島 蓉子

ジャーミー ・・・・・・・・・・・・・・・ アベディン・モハメッド

その他、詳細データは別項を参照

【感想】

この作品は2000年7月7日からテレビ朝日の深夜枠で
スタートした仲間さんの代表作「TRICK」の続編です。

「TIRICK」から「TRICK2」になって変わったのは
瀬田一彦役の遠藤直哉さんが出演しなくなった事と
主なスタッフの中で大根仁(演出)保母浩章(演出)
林誠人(脚本)が抜けて鬼頭理三(演出)太田愛(脚本)
福田卓郎(脚本)が新たにスタッフに加わった事ですが
基本的にスタッフ・キャストは前作と変わっていません。

この作品の前作に当たる「TRICK」の放映開始当初は
「金田一少年の事件簿」「ケイゾク」「IWGP」の演出を
手掛けた堤幸彦監督がチーフディレクターという事で
一部のマニアから注目を集めていた程度でしたが

「TRICK」のDVD・ビデオの販売およびビデオレンタルが
非常に好調な結果を残した事で、放映終了直後から
ささやかれていた「TRICK2」の企画が具体的になり
1年後の2001年8月から「TRICK2」の撮影がスタート。

翌2002年1月11日から放送が開始した「TRICK2」は
業界における仲間さんの評価を向上させただけでなく
従来のマニアに加えて新しいファンを獲得しました。

「TRICK2」は同枠の連続ドラマとしては過去最高の
平均視聴率を獲得し、当初から予定されていた?
映画化に向けて、さらなる飛躍の弾みをつけました。

「TRICK2」の実現は「TRICK」ファンにとっては願っても
ない事で、誰もがその放送を心待ちにしていましたが
実際に放映された「TRICK2」の内容は、必ずしも
トリックファンの期待に沿う物ではありませんでした。

「TRICK」では「父を殺した本物の超能力者を探す」という
明確なテーマが存在していたために、どんなに小ネタや
ギャグが盛り込まれていてもネタの世界に引っ張られて
ストーリーが破綻してしまうような事はなかったのですが

「TRICK2」は「TRICK」でテーマが解決してしまったので
ストーリーの骨子となるべきテーマが基本的に存在せず
エピソードの最後に『本当の超能力者はいるのです!』と
言わせておけば、テーマ性が保てた「TRICK」と比べて
ややもすると『内容のないシチュエーションコント』に
なりかねないという非常に危うい要素を孕んでいました。

だからと言って前作でいったん解決したはずのテーマを
「やっぱり事件は解決してなかった!!」なんて具合に
蒸し返すのはあまり頭のイイやり方ではありません。

そこで「TRICK2」では『近代科学と心霊主義の対立』とか
『超能力の真偽を問う』なんて小難しい話からは離れて
巨根物理学者と貧乳マジシャンというヘンテコなコンビが
様々な怪奇事件を全部全てまるっと解決!!するという
一番分かりやすい「TRICK」の特徴をクローズアップした
単純明快な『推理コメディ』が基本路線になりました。

そのためエセ超能力者とマジシャンの対決という構造は
形骸化し、『金田一少年の事件簿(NTV系)』のように
ただ怪奇事件の謎を解くだけの『推理サスペンス』的な
エピソードが「TRICK2」では目立つ結果となりました。

このため「TRICK」のちりばめられたギャグの中に漂う
重苦しい雰囲気を愛していた「TRICK」マニアからは
「2」になってただのギャグドラマになってしまった。
酷評される事も珍しくありませんでした。

また、登場人物の人間関係は前作を引き継いだ形に
なっていましたが、1年半後に放映された作品だけに
それぞれの関係やキャラクターには変化が現れていて

前作では役に立たない専門知識を披露しては奈緒子に
バカにされ、事件の肝心なところでは、いつも気絶して
最終話まで奈緒子の足手まといでしかなかった上田が
奈緒子の手を借りずに自分でトリックを解いてしまったり

亡き父を深く敬愛し、マジシャンという職業に誇りを持ち
正義感が強くて、どこか暗い影を背負っていた奈緒子が
単に金と食い物に意地汚い女に変わってしまった事は

時間の経過による変化というより設定の変更のようで
「TRICK」のキャラクターを深く愛していた人であれば
あるほど、受け入れがたい変更点だった事でしょう。

他にも前作でも使ったトリックの使い回し(迷い道)や
同じトリック(2重封筒など)が何度も登場したりと
ネタ切れ?と思われても仕方ない部分もありました。

そんな事から、単純に比較論で優劣をつけるならば
「TRICK2」が「TRICK」と比べて作品として完成度の低い
ドラマであった事は、まず間違いないだろうと思います。

しかし「TRICK2」自体が「TRICK」の後日談的なモノで
ある以上「TRICK」と「TRICK2」を全く別の作品として
語るのはナンセンスですし、一連の作品として考えるなら
比較論で優劣をつけようとするのにも無理があります。

続編が制作されるのは前作の人気が高かったからで
当然、続編が制作されるからには前作以上のモノを
期待されるワケですが、それは簡単ではありません。

続編となれば、通常は前作の登場人物で前作の続きを
描く事になるワケですが、たとえば「TRICK2」のように
すでにドラマが完結している作品のエピローグ的な話が
前作の本編ほど盛り上がらないのは当然なのです。

『パート2物は成功しない』というジンクスがあるのは
続編はすでに『パート1』で手の内を見せている状態で
制作せざるを得ないため『インパクト』が失われる事や

『パート1』のストーリーやコンセプトの完成度が高いほど
展開や設定の制約を受けて自由度が低くなる続編で
前作のクォリティを超える事が容易でないのが原因です。

そういう意味で、あえて前作と同じテーマは踏襲せず
小ネタやギャグに力点を移して前作とは違う楽しみ方を
提供する方針に切り替えたのは英断だったと思います。

事実、ムリヤリ「TRICK」の最終エピソードと関連付けたと
思われるepisode5「妖術使いの森」が、その設定からして
完全に破綻してしまっていて中途半端な内容だった事は
逆説的に、この変更が正しかった事を証明しています。

ネタの使いまわし、キャラクターの変貌、ギャグドラマ化と
前作とは似て非なる作品になった感のある本作でしたが
「TRICK2」では最後の最後に、それまで堪った不満を
払拭するだけの意外な展開が待っていました。

最終話は上田と奈緒子の
ラブストーリーだったのです。

たしかに「TRICK2」では、前作「TRICK」では最終話まで
ほとんど登場しなかった上田と奈緒子の『恋愛風味』が
第1話から積極的に演出・脚本に取り入れられており
最終話のエンディングに向けた伏線になっていました。

そして主演の仲間さんと阿部さんが、このエンディングで
これ以上ないほど素晴らしい演技を披露してくれた事で
「お気楽なギャグドラマ」という印象が払拭されました。

前作で唯一未解決だった『上田と奈緒子の関係』という
ネタを最後の最後になってメインテーマとして扱ったのは
ほど良い加減で、非常に上手い演出だったと思います。

夕暮れの谷中の街をトボトボ歩く奈緒子の後姿にかぶる
鬼束ちひろさんの『流星群』と奈緒子を探す上田の姿が
別れの切なさを増幅して、実にいいシーンになりました。

「TRICK」以来のファンにとっては番組が終了した
2年前の9月から、気になっていたネタだっただけに
1年半越しの切ないエンディングには感慨ひとしおで

「TRICK2」を見て、このまま延々と続くような気がしていた
「TRICK」という作品が、最終話のエンディングを見たら
「これで本当に終わってしまうのかもしれない。」と感じて
何とも言えない寂しい気持ちになりました。

映画が秋に公開される事を知っていたにもかかわらず。

正直言って、ボクは前作「TRICK」では上田と奈緒子の
『不毛な罵り合い』や『ネタの応酬』を楽しんでいたので
二人の恋愛ネタをメインにする事には否定的でしたが
このエンディングは非常に気に入ってしまいました。

「TRICK2」を第1話から最終話まで通して見てみると
最終話までのストーリーは、このラストシーンのための
長い前フリだったと言っても過言ではないと思います。

劇場版は、このエンディングの続きになるそうなので
今からどんなモノになるのか期待と不安が半々ですが
主演の仲間さんが2003年はNHK大河ドラマ『武蔵』に
出演する事が決まって「TRICK3」の実現が期待薄に
なっただけに劇場版の成功を願わずにはいられません。

モドル

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