リング0-バースデイ (映画) H12.12.28
2000年1月 劇場公開作品

原作  鈴木 光司  「レモンハート」 (「バースデイ」より)

監督  鶴田 法男

脚本  高橋 洋

出演 

山村 貞子−仲間 由紀恵

遠山  等−田辺 誠一

宮地 彰子−田中 好子

立原 悦子−麻生 久美子

重森    −若松 武史

音楽 「final」 L'Arc en Ciel ksc2-330

(あらすじ)

戦後まもなく、世間を騒がせた「千里眼の女」山村志津子が
公開透視実験の席で取材記者を変死させる事故を起こして
姿を消してから数年が過ぎた後の出来事。

舞台は昭和43年、18歳になった山村志津子の娘、貞子は
母・志津子の死後、何かに怯えるように内向的な性格になり
東京に上京し、精神科医のカウンセリングを受けていた。

気持ちを外に開放することで不安感を解消しようと考えた
貞子は、東京の劇団「飛翔」に研究生として入団する。

貞子は決して特別なことをした訳ではなかったが周囲は
なぜか彼女を恐れ、忌み嫌うようになり貞子は孤立する。

そんな中、新作劇「仮面」の主演女優が謎の変死を遂げる。
演出家・重森(若松武史)が、何故か研究生の貞子を代役に
抜擢したため、貞子は周囲からますます孤立してしまう。

貞子が主役に抜擢された夜、重森が貞子のアパートを訪れる。
重森が貞子を主役に抜擢した代償は彼女の肉体であった。
「お前を大女優にしてやる。」と言う重森に貞子は蹂躙される。

そんな貞子を、優しく見守り、暖かく励ます音響担当の遠山
(田辺)だったが、彼を慕う同僚の立原(麻生)は主演女優を
殺したのは貞子だと信じて疑わない。

やがて、公開透視実験の際に死亡した新聞記者の婚約者で
復讐のために貞子を探していた、新聞記者の宮地(田中)が
ついに貞子の所在を突き止め、重森のもとを訪れる。

宮地の出現によって、山村志津子の事を思い出した重森は
貞子が自分の事も殺すのではないかと疑い彼女に詰め寄る。
身に覚えのない貞子は、なすすべもなく重森に殺されかかるが
そこへ現われた遠山が重森と揉み合いになり、勢い余って
遠山が重森を殺害してしまう。

ひとまず重森の死体を舞台袖に隠し、舞台初日を迎える二人。
−この舞台が終わったら二人でどこかに逃げよう。−
遠山の言葉を信じて舞台に上がる貞子。

しかし、舞台がクライマックスに差しかかった時。
宮地の差し金で、遠山に変わって音響テープを入れ替えた
立原が公開実験のテープを流すと、貞子は混乱し絶叫する。

貞子が叫ぶと劇場に怪音が響き、舞台上の照明が砕け散る。
貞子を連れに舞台に上がった貞子の父・伊熊博士の教え子で
彼女の身元引き受け人である医師が舞台上で変死を遂げると
劇場はパニック状態になる。

そんな中、舞台袖で重森の死体を発見した劇団員は犯人を
貞子と決め付け、めいめい武器を手に貞子に襲いかかる。
そして、無抵抗の貞子を劇団員は寄ってたかって撲殺する。

全身の骨を砕かれ、むごたらしい亡骸となった貞子の姿に
号泣する遠山だったが、悲劇は幕を開けたばかりであった。

(感想)

「貞子」が井戸やテレビから這い出すシーンが話題を呼んで
和製ホラーブームを巻き起こした「リング」のシリーズ最新作。
これまでの作品では「恐怖」の象徴として、禍禍しい化け物の
ように描かれていた「人間・山村貞子」の青春を描いた作品。

原作は一連の作品同様、鈴木光司氏ですが、かなりアレンジが
加えられている模様。この辺の是非は原作を読んでいないので
何とも申せません。

なんといっても、主演の仲間由紀恵がチョ→イイ感じです。
とにかく、これでもかと言うくらい幸薄い「貞子」のキャラクターと
作り物のように整った彼女の顔立ちが非常にマッチしています。

初の主演映画にもかかわらず堂々とした演技で驚かされますが
実は彼女の芸歴は意外に長く、94年に沖縄限定公開ドラマ
「青い夏」という作品でデビューして、東京に上京して以来
人気ドラマ(「神様もう少しだけ」「二千年の恋」「天うらら」など)
の脇役や映画のチョイ役(「友子の場合」「ガメラ3」など)の他に
アニメ(HAUNTEDじゃんくしょん)の主題歌と声優にも挑戦。
TVゲーム「トゥルーラブストーリー」や「ロックマンX4」などでは
テーマソングやイメージソングを歌っています。

芸歴を見る限り、かなりヤバ目のイタイ仕事も多数こなしており
年のわりには下積み時代がけっこう長かったようです。
(ガメラ3では一瞬だけ登場し、イリスにミイラにされる悲惨な役)

作品自体は一連のシリーズ作品と較べてホラー色がかなり薄く
見た人の殆どが「貞子」に感情移入出来るようになっています。

だって可哀想過ぎるんですもの(´τ`)σ<貞子

一瞬、期待を持たせておいて奈落の底に突き落とすラストは
後味の悪さから言うと、ある意味ホラーかもしれませんが(笑)
全体的には、恐怖映画と言うより、周囲のエゴに翻弄されて
儚く散った薄幸の美少女の非常に悲しいラブストーリーです。

ただ禍禍しく恐ろしい力を持つ怨霊として描かれてきた貞子の
儚く、憐れで、陰惨な半生を映像化することによって、貞子に
確固たる人格を与え、見る者に彼女を人として認識させる事で
「夜中にビデオを見るのが怖くなった。」という人が現われるほど
半ば都市伝説化しかけていた「山村貞子の怨霊」の呪縛から
視聴者を解き放つための「除霊映画」という印象も受けました。

とにかく「貞子が怖い!」と思っている人にはお勧めします。
この作品を見ればちっとも怖くなくなります。(マジで)

この後、TVドラマ「トリック」で全く正反対のエキセントリックな
役をこなした仲間由紀恵の今後に注目したいと思います。

モドル

inserted by FC2 system