君といた未来のために−I'll be back-
1999年1月16日〜3月20日放映作品 (NTV系)
全10回 土曜 21:00〜21:54放映

(おもな出演者)

堀上 篤志  ・・・・・・・・・ 堂本 剛

山岸 由佳  ・・・・・・・・・ 遠藤 久美子

黛  裕介  ・・・・・・・・・ 佐野 史郎

堀上 弘志  ・・・・・・・・・ 内藤 剛志

室井 蒔   ・・・・・・・・・ 仲間 由紀恵

西野 さやか ・・・・・・・・ 小嶺 麗奈

堀上 裕美  ・・・・・・・・ 真行寺 君枝

  シゲ    ・・・・・・・・ 青木 伸輔

 マスター   ・・・・・・・・ 篠井 英介

(スタッフ)

プロデューサー   重松 修、井上 健、鈴木 聡

演出         佐藤 東弥、唐木 昭浩、荻野 哲弘

脚本         大石 哲也、吉田 智子

音楽             coba

主題歌       「やめないで、PURE」 Kinki Kids

ビデオ・DVD    ビデオ全五巻(株式会社VAP)

参考文献  『リプレイ』 ケン・グリムウッド(新潮社)

(ストーリー)

1999年12月、スーパーでアルバイトをする堀上篤志(堂本)は
大学卒業を控えていたが、バブル崩壊のあおりをうけて就職も
ままならない状況で、悶々とする毎日を送っていた。

そんな篤志の苦しみを父・弘志(内藤)は一切理解しようとせず
顔を合せば篤志に口うるさく小言を言うばかりであった。
夢もなく就職は決まらず、親友・シゲ(青木)の自殺を止める事も
出来なかった篤志は『人生がやりなおせれば』と願うようになる。

そんな篤志が、偶然通りがかった映画館で昔、母親と見た映画
『忘れ物の森』という映画を見た事から不思議な物語が始まる。
幼なじみの由佳(遠藤)と流星を観に行く約束をすっぽかして
映画を見ていた篤志は、2000年の1月1日になると同時に
心臓が謎の停止を起こして突然死亡してしまう。

しかし、篤志が目覚めるとそこは1995年7月の世界であった。
周囲の何もかもが4年前のままの世界の中で、自分一人だけが
未来の記憶をもっていた篤志は状況が飲み込めず困惑する。

そして篤志は行きつけの喫茶店『古時計』で、自分と出会う前の
シゲと再会し「もし人生が繰り返されるなら・・」と考えるようになり
そして競馬の結果が変わらない事からその事を確信した篤志は
未来の記憶を利用して人生をやりなおす事を決意する。

馬券は面白いように当たり、試験の結果も順調になった篤志。
しかし、決して篤志を認めようとしない弘志に篤志はいらだち
ついに家を出る事を決め、競馬や投資で稼いだ金で豪邸を買う。

未来の記憶を駆使して競馬や株で儲け続ける篤志は、徐々に
生活ぶりも人間性も変化して由佳との関係にズレが生まれる。
やがて、篤志は偶然出会ったお嬢様の西野さやか(小嶺)を
我が物にしようと野心を燃やすようになる。

さやかに名誉と才能を示すため、篤志は実際の歴史よりも早く
『たまごっち』を開発し、一躍売れっ子クリエイターに変貌する。
パーティの席上で、篤志は由佳の目の前でさやかを誘う。

名誉も地位も愛情もすべて手に入れて有頂天になる篤志は
その後もヴィジュアル系バンドを発掘するなど快進撃を続ける。
しかし、そんな篤志の前に謎の男、黛裕介(佐野)が現われる。
黛は「ボクの顔を覚えておいて欲しい。」とだけ言い残して去る。

ある日、篤志に弘志からとつぜん呼び出しの電話がかかる。
篤志は弘志がようやく自分の事を認めたのだと思って喜ぶが
弘志が篤志を呼び出した理由は、篤志の莫大な資産の運用を
弘志の勤める銀行に任せさせるためだった。

失望した篤志は酒に酔い、初めて篤志と弘志の確執の原因が
幼い頃亡くした母の死にあることを、さやかに告白する。
初めて篤志が自分に心を開いてくれた事を素直に喜ぶさやか
篤志とさやかは、このとき初めて本当の意味で心を通わせる。

しかしその後、篤志はフリーライターの小暮から母の死の原因が
事故ではなくノイローゼによる自殺だったと聞かされ愕然とする。
篤志は仕事にかまけて母の苦しみを放置した弘志を激しくなじる。
父と子の確執は決定的なものとなり、篤志は弘志と決別する。

そして、この頃から篤志の人生の歯車が少しずつ狂い始める。
篤志が歴史を早めた事で、全体の流れが前倒しに流れ始め
時代が徐々に篤志とシゲを追い越し始めて行くのだった。

未来の記憶に頼る事に限界を感じた篤志は引退を決意するが
事情の分からないシゲは篤志に内緒で仕事を引き受けてしまい
莫大な借金を抱える。呆れた篤志はさやかの説得も聞かずに
シゲと決別し、それをきっかけにさやかも篤志のもとを離れる。

結局、シゲの借金のおかげで財産のほとんどを失った篤志は
1999年の暮れ、最後の有馬記念に全てを託そうとしていた。
その時マスター(篠井)から電話が入り、莫大な借金を抱えた
シゲが万馬券を当て取り返そうとしている事を知らされる。

シゲが馬券を外す事を知っている篤志はシゲを止めようとするが
結局シゲは馬券を外して1度目の人生と同じく自殺してしまう。
篤志はシゲをまた助けられなかった事に強い後悔の念を感じる。

全てを失った篤志が1999年の12月31日、1度目の人生で
すっぽかした由佳との約束の場所に行ってみると彼女がいた。
由佳はアメリカに留学して成功を収めていたが、1度目の人生で
彼女から留学を相談された時、篤志は真面目に聞かなかったが
由佳が本当は彼に留学を止めて欲しかったのだと知らされる。

その事を後悔しながら、流星を眺める篤志だったが2000年の
1月1日を告げる鐘が鳴ると、ふたたび篤志の心臓が止まる。
そして、堀上篤志の3度目の人生が始まるのだった。

2度目の人生で母の死の真相を知った篤志は、母の自殺現場を
訪れ、弘志がそこで泣いていた事を知り、弘志と和解する。
篤志は2度目の人生の教訓を活かして3度目の人生は地味でも
穏やかな生活を送ろうと考えていたが、自分が何もしないのに
さやかの家が没落し彼女の運命が大きく変わっている事を知る。

さやかの家を訪れた篤志に残された篤志の運命を知る者からの
謎の手紙を見た篤志は、自分と同じ運命を持つ者の存在を知り
さやかを救うために、ふたたび彼女の人生に関わる事になる。

さやかと再会した篤志は、彼女の父親が詐欺にあった事を知り
手紙を寄越した謎の人物がそれに関わっていると確信する。
篤志は時間を洗いなおす事で、記憶と違う部分から犯人を探し
さやかの協力もあって、流行仕掛け人の松尾シンヤに辿りつく。

そんな時、『M』と名乗る謎の人物から由佳宛てに手紙が届く。
あなたの大切な人の秘密を知っている。その事で話があるので
ある場所へ来て欲しい、と手紙には書いてあった。

危険を察知した篤志は由佳に外に出ないように言い家を出る。
手紙に書いてあった工場に向かう篤志は、そこに向かう途中で
その日、その工場で爆発事故があったことを思い出す。

記憶にあった通り、篤志の目の前で工場の爆発事故が起こり
誰も死ななかったはずの事故現場で、篤志は爆発に巻込まれて
倒れた松尾の姿を発見する。彼も『M』に呼び出されていたのだ。
松尾は『M』ではなかった。見えない敵の存在に困惑する篤志。
そこへ、松尾のブティックで働く女・室井蒔(仲間)が現われる。

(感想)

大雑把なストーリーは覚えていたものの詳細は忘れていたので
ビデオを借りて確認してみましたが、やっぱり面白いですね。
放映当時は藤子不二雄さんの『未来の想い出』と良く似た話だと
思って見ていましたが、どうやら共通のタネ本があったようです。

原作では、中年になって人生をやりなおしたいと願っていた男が
14歳に戻ってしまい、人生を繰り返すうちに同じ運命を持つ
女性と知り合い、やがて惹かれあっていくという話だそうですが
本作では、相手の女性を恋人ではなく、パートナーに変更して
悪意の象徴として黛という男を配するという構造になっています。

タイムスリップ物をテレビでやるということで、ショボイ事になるの
ではないかという懸念がありましたが、さかのぼる時間を4年に
抑えた事で、時代がかった大きなセットを組んだりする必要もなく
BGMや小物で時代を表現できたのは成功だったと思います。

「未満都市」でも、なかなか自然な演技を見せていた堂本剛君に
引き続き無理に標準語でなく関西弁で芝居をさせたのは正解で
このドラマでも力の抜けたナチュラルな演技を見せています。

ヒロインとして女の子が3人出演していますが、この3人の中で
いちばん印象に残らないのが、由佳役のエンクミちゃんでした。
彼女の役がいちばん変化に乏しく面白味の少ない役なので
エンクミちゃんは、他の二人と較べるとちょっと損をしている感じ。
ロングヘアーのヅラも変な感じでした(´τ`)σ

小嶺麗奈さんの西野さやか役は放送当時いちばん印象に残った
役でした。最初は気位の高いお嬢様で登場し3度目の人生では
父親の事業の失敗で、どん底の生活を強いられるという役。

西野さやかは、普段の高飛車で嫌味なお嬢様ぶりと、篤志に心を
開いた時にだけ見せるいじらしさとの落差が強く印象に残る役で
彼女についてはこの役しか印象に残ってないくらい良い役でした。

仲間さんが演じる室井蒔も、繰り返される人生に翻弄されながら
保母、キャリアウーマン、喫茶店のバイト、ホステスと職業を変え
けっきょく悪い男から逃れる事が出来ないという可哀想な役。

そこら辺から蒔とさやかの記憶がゴッチャになってしまいましたが
見直してみると、蒔は明らかに「篤志」「黛」と並ぶ主役の一人で
「由佳」や「さやか」より、ずっと大きい役だった事が判りました。
ホステス役はかなり無理があるような感じがしましたが(´τ`)σ

蒔が最後に篤志と別れる時のセリフが非常に切なくて良いです。
一度は篤志に「私、篤志の事が好きだった。」と告白しながらも
篤志が由佳とやり直すために運命と立ち向かっていた事を
痛いほど判っていた蒔は叶う事のない想いを打ち消すように

「由佳さんを大切にしている篤志の事が好きだった。」

と、言い直すのですが、5回の人生で一度も男から大事に
されなかった蒔の、由佳と篤志に対する憧れも感じさせる
非常に切ないセリフでした。

ちなみに、西野さやかが2度目の人生で篤志と別れた時には
「シゲさんを大事にしている篤志の事が好きだった。」という
セリフがあり、蒔のセリフと呼応する形になっているようです。

弘志役の内藤さんと黛役の佐野さんは言わずもがなの存在感。
黛の役は非常に重要な役なので佐野さんの貢献度は高いです。
黛がニーチェの「ツァラトストラかく語りき」を原文で読むシーンは
たしか佐野さんのアイデアだったと記憶しています。

篠井英介さん演ずる古時計のマスターもなかなかイイ感じです。
蒔に語る「人は他人の後姿なんかに興味はない。」という言葉は
なかなか説得力のある良いセリフだと思います。

脚本の構成の緻密さも非常に光っていますね。

序盤で登場した伏線が、かなり後半になってから活かされたり
蒔やシゲや弘志の過去が回を追うごとに明らかになる展開は
行き当たりばったりになりがちな、この手のドラマにしては珍しく
最初から緻密に計算された物だという事が分かります。

由佳と篤志の23年越しの再会というのもロマンチックですね。

ただ、どうしても由佳より、さやかや蒔に感情移入してしまうので
蒔が田舎に帰るという結末は少々安直に感じられ、もう少し違う
閉じ方があったのではないかという感は禁じ得ませんでした。

あとは、エンクミちゃんが篤志を呼ぶ時のセリフが「あっしー!!」
としか聞こえない事とか、剛君がお母さん(真行寺)を呼ぶ時の
「かぁさん」の発音がヘンだった事が特に気になりました(´τ`)σ

モドル

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