2003年7月30日『明日があるさ THE MOVIE』の感想。
2002年 10月5日より 全国東宝系映画館で公開

製作 明日があるさTHE MOVIE製作委員会

プロデューサー 門屋大輔 守屋圭一郎

監督 岩本仁志

脚本 高須光聖 坂東賢治

音楽 椎名KAY太

特別協賛 コカコーラ

制作会社 ROBOT

主題歌 『明日があるさ THE MOVIE バージョン』

      作詞 青島幸男
      作曲 中村八大
       唄  Re:Japan (Avex trax)

EDテーマ 「touch me,Kiss me」 Fayray (Avex trax)

【出演】

13課 課長 浜田 ・・・・・・・・・ 浜田雅功

1課 課長 望月 ・・・・・・・・・・ 柳葉敏郎

野口仁助 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 中村嘉葎雄

1課 上条沙紀 ・・・・・・・・・・・・ 酒井美紀

13課 主任 東野 ・・・・・・・・・・ 東野幸治

1課 藤井 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 藤井隆

13課 遠藤 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 遠藤章造

13課 田中 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 田中直樹

13課 亮 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 田村亮

社員 淳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 田村淳

受付嬢 仲間 ・・・・・・・・・・・・・・ 仲間由紀恵

受付嬢 山田 ・・・・・・・・・・・・・・ 山田花子

室長補佐 間 ・・・・・・・・・・・・・・ 間寛平

花紀 専務 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 花紀京

橋本 部長 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 伊東四郎

記者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ オール阪神

警官と違反男 ・・・・・・・・・・・・・ 中川家礼二、中川家剛

サラリーマン ・・・・・・・・・・・・・・ 宮迫博之、蛍原徹

謎の医者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 松本人志

浜田貞代 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 相良晴子

よつば会 講師 ・・・・・・・・・・・・ 桂三枝

陶芸家 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 三瓶

林 社長 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 林裕章(吉本興業社長)

加茂 本部長 ・・・・・・・・・・・・・・ 青島幸男

大臣 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 西川きよし

【あらすじ】

東証2部上場の中堅総合商社『トアールコーポレーション』は
宇宙開発事業というビッグビジネスに乗り出そうとしていた。

宇宙開発事業を取り仕切るのは、エリート社員・望月(柳葉)
率いるエリート集団、営業1課と、アメリカの一流企業から
ヘッドハントされたロケット工学のスペシャリスト上条(酒井)。

そんなトアールコーポレーションの中の落ちこぼれ部署
営業13課の課長を務める浜田は、同期の望月の華々しい
活躍を横目で見ながら地道な営業活動に明け暮れていた。

そんな浜田が営業先で偶然知り合った謎の老人(中村)は
浜田が売り込みに来た中国製の陶器に強い興味を示す。
老人の夢は自分の作ったロケットで宇宙に行く事だという。

しかし浜田は誰もが『頭のおかしな老人』としか思わなかった
この老人になぜか惹かれ、『ロケットに乗って宇宙に飛ぶ』と
いう少年の頃の夢に向かって突き進み始める。

【メモ】

2000年・秋から『コカコーラ・ジョージア』のシリーズCMとして
放送され、坂本九のテーマソングと豪華なキャスティングで
話題を博した『明日があるさ』が、連続テレビドラマ化を経て
その第1シリーズの集大成として製作されたのがこの映画。

監督の岩本仁志は『白線流し』や『ナースのお仕事』といった
テレビドラマの人気シリーズで演出を担当したドラマ畑の人で
本格的な劇場用映画の演出は今作が初監督作品になる。

ドラマ版『明日があるさ』も手掛けた放送作家の高須光聖と
『新・俺たちの旅1999(NTV)』の坂東賢治が脚本を担当。

特に高須氏はCM『明日があるさ』シリーズのテレビドラマ化を
企画した張本人で、企画の実現に向けて出演交渉などでも
中心的働きをした人物とも伝えられており、彼がいなければ
『明日があるさTHE MOVIE』も存在しなかった。とも言える。

音楽担当の椎名KAY太はテレビドラマ『レッツゴー永田町』
『ナースマン』などの音楽担当や、この映画の主題歌を歌う
「Re:Japan」のアルバムにも作品を提供している作曲家。

【感想】

『想像したよりキチンと作られてるなぁ』というのが第一印象。

ドラマ畑の演出家の初監督作品という話を聞いてたので
テレビドラマみたいな感じの映画になるんじゃないかしら?
と、思ったりもしたんですが、しっかり映画してました。

技術的な事は良く分かりませんが、BGMやSEの使い方
ひとつとっても、明らかにテレビドラマとは違うアプローチで
見るからに『映画っぽい』作品に仕上がっていると思います。

映像をボーっと見ているだけでも登場する小道具やセットの
ひとつひとつに大変お金がかかっているのがよく分かりますし
特撮部分も一昔前の邦画SF大作から考えると格段の進化で
クライマックスの打ち上げ→宇宙空間の描写も違和感がなく
全体的にしっかり作られていて好感の持てる映像です。

ただ、物語の方はテレビドラマ版と大差ない
酷く安っぽいシロモノになっておりまして。

ファーストシーンの牧歌的情景描写からも見て取れる通り
昭和30年代に少年時代を過ごした中年男性をターゲットに
テレビドラマでも、さんざんそのアイデアを拝借された映画
『フィールド・オブ・ドリームス(89年米)』の路線を踏襲しつつ

落ちこぼれがエリートに勝つ!!とか

夢は願えば必ずかなう!!みたいなテーマで

相変わらずダメ人間のキズの舐め合い物語になってます。

主人公の浜田課長は、良く見れば営業力もある努力家で
別にダメ社員でもなんでもないんですが、テレビドラマ版から
登場している同期のエリート社員、望月(柳葉)と浜田課長を
終始対比する形でストーリーが進むために、否が応でも
エリート社員VSダメ社員という構図に見えて来ます。

そもそも、この映画は『日本中の頑張ってる人』を
励ますべく製作された映画だったはずなのですが
頑張ってる人=ダメ社員だとでもいうのでしょうか?

ダメ社員がエリートに勝つ!などという成功譚を描く事で
『エリートは楽して良い目を見ている。』というダメ人間の
ヒガミ根性むき出しのカタルシスが満たされるとでも?

バカにすんな。

莫大な資金と先端技術を投入したロケット打ち上げ計画が
失敗するなんて事は、たしかに珍しい事でもありませんし
別に見てるコッチも専門的な知識は持っていないので

人間を宇宙まで運ぶにはロケットが小さすぎないか?とか

エンジンはいいとしても燃料をどこから調達したのよ?とか

あんな近くでロケットの打ち上げ見てて大丈夫なのか?とか

フツー打ち上げる前に警察や消防から止められるだろ。

なんて細かい事まではイチイチ言いませんが(参照

1課の望月らが中心となって進めていた一大プロジェクト
あやなみ1号の打ち上げが失敗した原因が不明のままで

ロケット工学のスペシャリストという上条沙紀(酒井美紀)が
ひと目見るなり『このロケットは飛びません!』と断言した
野口老人のロケットが、彼女の言葉に反して飛んでしまった
理由も不明なままではなんの説得力もありません。

ここは「なぜロケットが飛んだのか?」という問いに対して
『あやなみ一号の打ち上げ失敗を見てヒントを得た。』とか
『機体の軽量化に成功した』というような納得できる理由が
ないと『ヤッター!飛んだでぇ〜!!』なんて言われても
「なんで?」という疑問ばかりが残ってしまうのです。

野口老人のロケットが飛んだ事に対して用意された答えが
『頑張ったから』とか『いい人だから』なんて理由では
正直言って感動も出来なきゃ共感も出来ません。

てか、何でも『願えば必ずかなう』では
宗教じみててキモチ悪くないですか?

どこにでもいる普通のサラリーマンが宇宙飛行士になる。
大人になって忘れかけていた子供の頃の夢を思い出す。
という夢のある物語は決して悪い題材だとは思いませんし
映像もロケットの模型も、とてもよく出来ていると思います。

しかし、全体を見ると物語に余計な装飾が多すぎて
スカっともしないし、さわやかな視聴後感も残りません。

なにより、ターゲットがほぼ中年男性に限定されてるワリに
『念ずれば夢は必ずかなう』で、全て押し通してしまうので
荒唐無稽な夢物語という印象しか残らないのがネックです。

例えば偶然出逢った初心者の老人に釣りを教えてあげたら
実はその老人が自分の勤める会社の会長だったのだ!!
なんて設定も、リアリティがないっちゃーないんですが(笑)

それでも「0,000001パーセントはあるかも?」と思えるのと
「99,999999パーセント無い!!」としか思えないのとでは
言ってる事は同じでもニュアンスがまったく違うと思うのです。

この映画の場合、「あるかも?」と思わせるための設定を
考える事を放棄してしまったとしか思えないのが残念です。

落ちこぼれがエリートに勝つ!!というテーマがメインなら
もっと現実的な絵を描ける夢でないと納得が出来ませんし
少年の頃の夢を思い出そうよ!というファンタジーにしては
全体の流れがイヤな具合に所帯じみてて中途半端です。

浜田雅功さんを除く吉本オールスターズの演技の微妙さは
テレビドラマ版ですでに分かっている事なのであえて指摘は
しませんが、笑いのプロが集まった映画で笑えるシーンが
ほとんどないってのはどうなのよ?という気がします。

上条(酒井)も、せっかくロケット工学のエキスパートとして
登場したなら、機体の軽量化のヒントを与えてくれるとか
活用の仕方がもっと他にもあったのではないでしょうか?

結局、肝心なところを全部”精神論”で押し通してしまうなら
いっその事、野口老人も妖精的な存在にしてしまって

『少年の心って・・・ステキやん?』

というような”夏の日の夢ものがたり”にしてしまった方が
もっと、割り切って楽しめたのではないかと思いました。

映像はとても綺麗ですし、特撮もなかなか迫力がありますが
ストーリーの詰めが甘い印象なのがもったいないですね。

結局、この『明日があるさ THE MOVIE』という映画が
「コカコーラ・ジョージア」や「日本テレビ」とのタイアップにより
大々的に宣伝が行われながら興行的に成功しなかったのは

TVドラマ版の第1話では29,0パーセントもあった視聴率が
最終回では15,8パーセントと、初回視聴率の約半分まで
落ち込んだ原因について、しっかりとリサーチをしないまま

平均視聴率19,0パーセントという数字のマジックを頼りに
ドラマ版のコンセプトをそのまま踏襲した映画の製作を
進めてしまった事が最大の原因じゃないかと思います。

CM、ドラマに続いて受付嬢役で出演した仲間由紀恵さんは
シーンにして三つ、時間にして約2分ほどの登場時間です。

テレビドラマ版でも、いないに等しい役柄ではありましたが
ドラマ同様、肝心のストーリーが面白くもクソもないので
仲間さんを目当てに見るにはあまりにもツライ2時間です。

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